記事のポイント
- 金融庁・日銀、共同審査
- 大手銀行への耐性審査
- 金融機関の変化
- 金融庁と日銀の取り組み
- FATFによる対日審査
金融庁と日本銀行が共同で、大手銀行を対象に財務健全性を測る耐性審査を行うことを3日、日経新聞が報じた。同庁はこの耐性審査だけでなく、資金洗浄対策強化などFATF審査に備えた取り組みを進めている。
金融庁・日銀、共同審査
金融庁と日本銀行が共同で、大手銀行を対象に財務健全性を測る耐性審査を行うことを3日、日経新聞が報じた。これまでこの耐性・健全性に関しては、両当局が審査を行うのではなく各行が設ける基準に委ねていた。しかし、株安や円高などの金融市場の緊張度が高まっていることや銀行の海外収益比率が高まり今まで以上に海外発リスクを受けやすくなっているなどといった状況を受け、両当局は共同で検証し各行の課題を正確に把握。国内金融システム全体の安定性向上を目指す。
耐性審査は、市場で不測の事態が生じても銀行が健全性を保ち、業務を継続することが可能であるかを審査するものとなっており、この結果に応じて対策を取ることで有事の際の被害拡大を防止する。近年では国内の低金利という収益を上げにくい環境から、銀行は海外事業強化を進めており、これまで以上に海外の影響を受けやすくなっているのである。
金融機関の変化
人口減少に伴う利用者の減少や低金利からの収益減少。技術発展に伴う非金融業からの金融業への参入による競争激化など、国内銀行はコスト削減や収益構造の見直し、技術への適応と多くの課題を抱えている。とくに首都圏への人口流出が激しい地域の地方銀行においては金融サービス手数料で収益を上げることも困難になっており、ATMの削減や銀行オフィスの空いたスペース貸し出し等様々な対策を行っている。
大手銀行であってもこうした国内環境の影響を受け、海外事業強化を進めることで収益を上げようとする動きが見られている。金利や人口といった問題からリスクも変容しており、こうしたリスクを監視当局が正確に把握することが金融安定につながるとされている。
金融庁の取り組み
金融庁は今回の日銀と共同の大手銀行向けの耐性審査だけではなく、資金洗浄対策として地方銀行が使用可能な共同システム開発の検討を進めている。これは、利用者のリスク判断や制裁者対象者の照合、取引リスクなどの業務に人工知能を導入し制度を高めるとともに業務コストの削減を目的としている。設計などの初期費用は国が負担し、資金などの面でリスク対策が不十分になりやすい地方銀行のリスク対策を一律に向上させようとする考えだ。
現在日本は、麻薬・賄賂・脱税に係る資金洗浄やテロ資金供与への国際的な対策を協議する国際機関[金融活動作業部会(FATF)]による審査を受けており、前回(11年前)の審査では本人確認などの資金洗浄対策が不十分と最低の評価を受けた。また、2014年にはこの評価を受けたのにもかかわらず不十分な対策であったため国際的に名指しで非難が行われた。
この前回評価を覆し、資金洗浄対策が整備されていると評価されるためにも大手銀行だけでなくリスク対策が甘くなりがちな地方銀行の対策強化を行うべく共同システム開発を行おうとしているのである。金融庁は金融犯罪手口が変化していくことや組織的犯罪に効率的に対応するためにはこうした共同システムを設け、情報共有を行いつつシステム更新を定期的に行える共同運営が最適だと考えているようだ。
- 金融活動作業部会 Financial Adtion Task Force(FATF) 麻薬・賄賂・脱税に係る資金洗浄やテロ資金供与への国際的な対策を協議する国際的な政府機関である。G7を含む35か国と2つの地域機関(欧州委員会・湾外協力会議/合計190以上の国・地域)が加盟している。
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参考:日本経済新聞[大手行の耐性審査 金融庁・日銀、海外発リスクに備え]