記事のポイント
- 中国、CBDCの導入可能性を示唆
- ブロックチェーン技術に多大な投資を行う中国
- 普及している「信用スコア」の効率化
中国、CBDCの導入可能性
中国中央銀行は金融会議にて、中央銀行によるデジタル通貨の発行・利用を進める可能性があることを明らかにした。ただ、これは同国中銀がこれまで進めてきたブロックチェーン技術・CBDCの研究が進み、「導入のために必要な準備が整った」という意味であり、実際に同国中銀がCBDCを導入するかどうかは不明である。
- 中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency/CBDC)中央銀行が発行するデジタルコインのことを指す。日銀は「デジタル化されていること」「円などの法定通貨建てであること」「中央銀行の債務として発行されること」の3つの条件を満たしたものをCBDCとしている。資金洗浄・テロ資金供与対策につながることや現金の発行・管理コストが抑えられることなどが注目されているものの、発行量や利用範囲・保有・発行形態など、発行したのちの影響だけでなく、発行するにあたっての議論も多く存在している
投資・開発援助に積極的な中国
同国に関してはネット規制・暗号通貨規制などの規制が厳しい国の印象が強いが、「政府の管理下で開発を行う」場合においては、政府から多くの援助を受けられるようになっている。例えば、ブロックチェーン技術に関しては、国家インターネット情報弁公室(CAC)に事業者登録を行い、CACが保存情報にアクセスする権限を持つことを了承し、情報を検閲される義務を負うことを認めることで、同技術を利用したサイト・アプリを国民に提供できるようになっている。
ただ、この規制だけでなく同国ではブロックチェーン技術に関する研究開発特区が設けられているほか、政府による同分野への巨額の投資、技術者への優遇処置などを行っていることから「政府監視のもとブロックチェーン技術分野を成長させていきたい」と考えているとみられる。厳しい規制体制が敷かれているものの、全面禁止を行っていないことからわかるように、同国はブロックチェーン・暗号通貨分野で世界的な地位を築くことになると予想されているのである。
- ブロックチェーン技術 取引履歴を暗号技術によって過去から一本の鎖のようにつなげ、取引履歴・情報を正確に維持しようとする技術であり、P2Pネットワークを利用することで中央管理者を必要とせずにシステムを維持することが可能なものとなっている。データの改ざん・破壊に強いという特徴を持つ。
「信用スコア」の効率化
中国においては前述のブロックチェーン技術だけでなくAIや顔認証技術・電子決済技術などの再センタ技術への開発・導入が進んでおり、社会全体のデジタル化が進んでいる。そうしたなかで同国は民間企業と政府が協力して個々人の情報を一元管理しており、社会の効率化基盤を築いている。そうしたなかで、中央銀行がCBDCを導入することは、政府が国民の購買情報を確認しやすくなるほか、経済がより効率的になると期待されている。
- ゴマ信用 中国巨大企業アリババ集団が提供するスマホ決済サービス「アリペイ」に搭載されている機能のこと。アリペイの決済履歴や利用履歴、収入などの個人情報で個人の信用度評価が行われる。収入に対して支出が多ければ、資産管理ができていないと判断され、過去に公共料金の延滞などがあれば信頼度は低くなるといった仕組みになっている。このスコアが高ければ、資産管理ができ、借金などもなく返済能力も高い人物だとみなされ、金融機関は安心して資金を貸し出しなどのサービス提供をおこなえる。一方信用スコアが低ければ、リスクの高い人物だとみなされ、商品・サービスの割引といった優遇は受けられない他、サービス提供を断られる場合もある。いまや中国国内の価値観を大きく左右するものとなっている。
[中国中央銀行、CBDC導入の可能性を示唆]
中国中央銀行は、近い将来で中央銀行によるデジタル通貨を発行・導入する可能性があると発表した。
同国は、暗号通貨に対して厳しい規制が行われているものの、基盤となるブロックチェーン技術に関しては、早期段階から投資・開発援助を進めていた国である。— 「コインの森」公式アカウント (@coinsforest_hp) August 12, 2019