記事のポイント
- 財務省広報誌「ファイナンス」
- 今月号は特集に暗号通貨の確定申告手続き
- 日本の暗号通貨に関する取り組み
財務省が発行する月刊の政策広報誌「ファイナンス」の1月号にて暗号通貨に関する記事が特集として組まれている。毎月財務省の予算や税制などの紹介のほか、各分野における著名人・有識者が自由なテーマで寄稿しており、読みごたえのあるものとなっている。
暗号通貨の確定申告手続き
財務省が発行する月刊の政策広報誌「ファイナンス」の1月号にて暗号通貨に関する記事が特集として組まれている。特集は「仮想通貨の確定申告手続きを簡素化」と2017年の暗号通貨市場の急激な価格高騰以降、利用者が急増していることをうけ、暗号通貨に関連する必要手続きの簡素化に取り組んでいる政策のほか、技術の説明などが行われている。
【#財務省広報誌「ファイナンス」】
◆特集:交換業者が年間取引報告書を交付 仮想通貨の確定申告手続きを簡素化(「ファイナンス」平成31年1月号より抜粋)https://t.co/2Jd2s7f3vq・財務省広報誌「ファイナンス」https://t.co/JCiDfVif4s#財務省 #国税庁 #仮想通貨 #確定申告 pic.twitter.com/mqFBn8Rnxp
— 財務省 (@MOF_Japan) January 29, 2019
所得は給与所得、不動産所得などの10種類に区分され、所得によって税金の計算方法が決まっており、暗号通貨はこのうちの雑所得に区分されている。そのため暗号通貨取引によって利益を得れば、当然、課税の対象になる。しかし、暗号通貨自体が新しいものであるのために、どのような課税になるのか、どのように損益計算を行うのか利用者が理解を深める必要があった。暗号通貨投資家はFXなどの投資経験がある方だけでなく、暗号通貨で初めて投資や金融を学ぶ方も多く、確定申告の存在を知らない方も存在していた。
そうした利用者意識と現状の体制の問題解決のため、国税庁は、平成29年12月に税法の解釈について明らかにした。雑所得とは「他のいずれにも該当しない所得」であり、給与所得以外の所得が年間20万円以下であれば申告不要なものとなっている。そのため、申告の必要性を確認するために、1年間の利益を計算する必要があるのである。
ただ、暗号通貨の値動きの激しさ以外にも、複数の取引所を利用している方は計算が複雑かつ膨大になるため、申告のための手続きは煩雑なものとなっていた。そこで国税庁は国内の登録済み仮想通貨交換業者と協力し、交換業者が年間取引報告書を納税者に交付する体制を整え、申告手続きの利便性向上を図ったのである。
暗号通貨に係る税の自主的申告を後押し
前述のような暗号通貨取引における損益計算、申告義務の有無の確認のしやすさなどといった確定申告手続きの利便性向上のほかに、高額・悪質な無申告者等を特定するための情報を照会する仕組みを整備する動きもある。
2018年10月17日に行われた政府税制調査会では、暗号通貨取引や民泊などによる所得を税務当局が正確に把握できる体制を作るとともに、所得に応じた税金を支払いやすくする仕組み作りを進める必要があるとされ、同年12月21日にはその仕組みを整備することが閣議決定された。これは納税者による自主的な適正申告を担保する観点から、国税当局が事業者等に対して高額・悪質な無申告者等を特定するための情報を照会する仕組みを整備することを認めたものである。国税庁では暗号通貨に関する税金に関わらず、すべての税において、納税者自身による適正な納税義務の履行を促したい考えであり、そのための確定申告に関する周知・広報を行っており、この悪質な無申告者への対応はその取り組みの一環であると同時に、2018年7月に行われたG20で「暗号通貨の脱税に関する問題」が提起されたことを受けてのことだとみられている。
まとめ
利益に関しての納税整備を整えることで、暗号通貨を「脱税手段」と批評する声を抑えることにもつながり、暗号通貨という技術が健全に発展していくことにつながっていくだろうと期待されている。ただ、暗号通貨に係る税金は最大で55%とかなり重く、この税率を見直すことが、日本の暗号通貨市場を活性化させることにつながるのではないかとみられている。
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参考:財務省[財務省広報誌「ファイナンス」]